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はりねずみ通信

兵庫県姫路市にあるかない動物病院。
椎間板ヘルニアの治療であるPLDDや腹腔鏡手術などの低侵襲治療に力を入れています。
<< 乳び胸について1 | main | 特発性乳び胸3 >>
特発性乳び胸2
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     獣医外科学のテキストを見て、「これはなにかの間違いじゃないか」と思った。
    特発性乳び胸の治療は「胸管結紮術」で、治癒率は50%と書かれている。

    もっとも太いリンパ管は「胸管」といい、胸腔に存在する。
    胸管のどこかが破れてリンパ液が漏れるのだから、胸管の入り口あたりを糸で縛ってしまえば、この病気が治癒するのではないか。そう考えるのは理にかなっている。(破れているところを直接縛ればいいではないか、そう思うかもしれない。でも、リンパ管である胸管はあまりに薄っぺらくて、肉眼では見えないのである。)

    手順はこうである。
    まず開腹し、腸のリンパ節付近のリンパ管を探す。ここに留置針を入れる。(胸管は肉眼で見えにくいため、造影剤や色素剤を注入するための準備だ。実はこれが技術的に非常に難しい。)
    次に肋骨の間から開胸する。
    背骨の下側に走っている胸管は、もっとも深部にある。大きく開胸し、無影灯の光が奥に届くようにしたり、ヘッドランプをつかって横隔膜のすぐ近くにある胸管の入り口あたりを照らす。
    先ほど腹部に設置した留置針から色素剤を注入する。
    そしてはっきり目に見えるようになった胸管を、糸で縛るのである。

    つまり、開腹術と開胸術を組み合わせる手術法なのだ。
    それで治癒率が50%。
    つまり、もともと呼吸困難で苦しみ長期間の経過で弱っている動物に、これだけの手術をしても半数しか助けられないのである。

    このことに関し、多くの研究者たちがその理由を考えてきた。
    どうやら胸管の入り口を止めても、リンパ管の迂回路ができ、症状が再発するようなのだ。
    造影検査の結果、胸管が見えていても、そこを止めるだけではだめなのだ。

    発想の転換が必要だった。
    乳び胸の動物は、リンパ液である乳びが胸膜に接触すると激しく炎症を起こす。
    それは心臓を取り囲む心膜にも及ぶ。
    乳び胸の動物の心膜が肥厚することは、以前から知られていた。
    私が読んでいる論文の著者Fossumは、この心膜肥厚が乳び胸が胸管結紮だけでは治らない理由ではないか、という仮説を立てた。

    ホースの先端が破れている。
    そのホースの根本を縛ると、別のルートができてやっぱり水が流れてしまう。
    「水圧を変えたらどうだろう」
    そう考えたのがFossumだった。
    乳び胸により心膜が肥厚すると、心臓に圧迫が加わる。それが静脈圧を押し上げ、乳び胸が悪化する。その負のスパイラルを止めるため、心膜を切除したらどうだろう。

    Fossumのすばらしいところは、だれもが心膜肥厚を乳び胸の「結果」だと考えていたのに対し、それを「原因」であると推察したことだ。

    彼女(Fossumは女性)は犬10例、猫10例に胸管結紮と心膜切除を組み合わせた手術を行った。その結果、犬では100%、猫では80%この病気を治癒に導いたのである。
    これは画期的なできごとだった。
    乳び胸の治療に、一筋の光が差し込んだのだ。

    しかし、それでも開腹術と開胸術を組み合わせる術式であったため、動物の負担は非常に大きかった。
    ところが、胸腔鏡手術がこの問題を解決するようになる。

    つづく。



    さきいくよ


    | 獣医医療 | 06:01 | comments(10) | trackbacks(0) | - | - |
    昨日の説明は本当にわかりやすかったです。
    乳び胸について教えて下さいという前に色々調べてたのですが、どれもこれもわかりにくくて、ある動物病院の先生方のサイトでわかりやすくいうと、と書いてあっても全然わからないし、で私も教えて下さいとかない先生にお願いしたのです。
    去年なくなったジュンは肝臓が悪くなって、胸に水がたまり先生に何回かぬいてもらってたので、この乳び胸も胸水という言葉がかかれてあったので、
    なんか知りたい気持ちになったのです。
    お忙しい時にすいません。続きを楽しみにしてますが、その前に全体像がわかったので、私なりにもう一度調べてみます。
    | レックス | 2013/01/23 9:27 AM |

    難しい手術なのですね! 何もわからない私ですが 想像力を掻き立てながら 読ませて頂きました。医療は 日進月歩と言われていますが その陰で 先生達のように 命を守る為に 一生懸命に研究し 解明し 助けてくださる… 本当に有り難く思います。
    明日のつづきも 楽しみにしています!
    先生の 説明は 本当に良くわかります。

    | ジョニーのママ | 2013/01/23 10:26 AM |

    ブログの内容と関係ないコメントで済みません。またお邪魔します。

    昨日、キドが亡くなりました。
    かない先生にも名前を覚えていただいていたので、お伝えしておきます。

    http://wiki.livedoor.jp/irifuji/ の「身辺雑記(メモ)」2013年1月22日のところに、追悼文のようなものを書きました。
    | 入不二 | 2013/01/23 11:22 AM |

    入不二さんへ
    キドちゃんのブログ読ませて頂きました。
    私も推定2~3才で人間にもなつくのはむずかしいが、あまり長生きはできないだろうからできたら飼ってあげてくださいとかない先生にいわれ、その時には前の犬がいたので、心配しましたが犬とはすぐ仲良くなり前の犬が死んだ時はミーも食欲なくなりもうだめかと思いきやレックスがきて、少し元気になりました。もう推定16~7才、今はできる限り抱いてグルルーといわせてます。入不二さんもできるだけの愛情をキドちゃんにそそいでこられたのだから、キドちゃんも幸せだったと思います。キドちゃんもこの家族のとこだったら幸せにくらせると思い息子さんについてきたのでしょうね。
    キドちゃんとの思い出話がご家族で笑顔でいえる日がくることを願ってます。


    | レックス | 2013/01/23 7:28 PM |

    レックスさん、温かいお言葉を、どうもありがとうございます。
    | 入不二 | 2013/01/23 7:40 PM |

    治らない病気が、治る病気になったんですね~
    素晴らしき 視点を変えた研究、医療の向上 ですよね
    すごいです

    ねこちゃんの両手の置き位置と、目に
    思わずカワイイ!!と 言った私。
    ねこちゃんも受け入れれるかも~(笑)です。
    ※飼いませんよ~ ももちゃんに手がかかりますからね(笑)
    | もも | 2013/01/23 8:49 PM |

    レックスさん、乳び胸という病気は難治性の病気ですが、とても少なく、私も過去に治療した子は全部覚えているほどです。また、続きを書いていきますね。

    ジョニーのママさん、医療を少しでも前に進めなければいけない、という気持ちはあります。病気の理解が進んで、苦しみから解放される動物が増えることが願いです。

    入不二先生、キドちゃんは亡くなったのですね。先生の記事、拝見しました。
    息子さんが悲しまれている様子のところを読みました。とても辛かったでしょうね。ご家族にとって、キドちゃんは幸せを運んできたような猫だということがよくわかりました。きっと天国で見守っていてくれると思います。

    ももさん、猫を気持ちの上だけでも受け入れることができれば、一歩成長ですね。次の段階はまた指導していきます(笑)。
    | かない | 2013/01/24 5:51 AM |

    かない先生、コメントをありがとうございます。
    まだ、家の中を歩いていると、ふとキドがすり寄ってくる気配だとか、ベッドの上に横になっている「空目」とかがあって、いなくなったというより、まだいるという感じの方が強いです。

    また、時々お邪魔させてもらいます。今後ともよろしくお願いします。
    | 入不二 | 2013/01/24 9:53 AM |

    キドちゃんの訃報を聞いて、コメントさせていただこうと思いながら、ゆっくり時間がなくて・・・
    ペット(家族)の死というのは、なかなか受け入れられないものですよね・・・

    ふと気配を感じたり、空白が気になったり・・・
    考えるだけで辛いです(涙)
    一日も早く、キドちゃんとの楽しかった日々を笑って話せる日が来ることを祈っています。
    | くうちゃんママ | 2013/01/24 5:20 PM |

    くうちゃんママさん、ありがとうございます。
    でも、穏やかに哀しみに浸っていますので、大丈夫ですよ。
    | 入不二 | 2013/01/24 10:07 PM |










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