RECOMMEND
SELECTED ENTRIES
RECENT COMMENTS
CATEGORIES
ARCHIVES
MOBILE
LINKS
PROFILE
OTHERS
|
|
はりねずみ通信兵庫県姫路市にあるかない動物病院。
椎間板ヘルニアの治療であるPLDDや腹腔鏡手術などの低侵襲治療に力を入れています。 2014.10.10 Friday
低侵襲で行う意味
動物を低侵襲で治療する意味について、改めて認識するようなできごとがあった。
猫のシンジロウは乳び胸の手術をし、先日無事退院した。飼い主のMさんがはりねずみ通信のコメント欄に、こんなことを書かれていたのである。 「低侵襲の手術でなければ、手術を受けなかったかもしれません」 現在乳び胸の手術で最も有効な方法は、心臓を取り囲む心膜を切除することと、リンパ管である胸管を結紮(クリップで留めたり、糸でくくること)することである。 通常は2ヵ所で開胸する必要がある。 肋骨と肋骨の間を切開し、開胸器といわれる道具でそこを開き、心臓やリンパ管にアプローチする。最も身体に負担がかかる手術は開胸術だと言われているが、その理由は肋骨を広げるという操作に疼痛が伴うからだ。その痛みは、術後も長期間続くといわれる。 そもそも弱っている動物に、こういった手術をしなければならないこと、手術の難易度が高いこと・・。獣医師からの説明を聞けば聞くほど、手術に踏み切れない飼い主さんは多いだろう。 負担が少ない手術だから決心した、というMさんの言葉には、大きな意味がある。 どんな病気でも、早期に治療することで、よい治療経過が得られることが多い。 低侵襲で行うことで治療のハードルが低くなり、動物たちを救うチャンスが広がる可能性があるのだ。 「自分は大きな手術を受けたってかまわないが、動物には負担をかけさせたくない」 と言われる方が多い。その気持ちは痛いほどわかる。動物は自分自身で治療を選んでいないからである。 獣医師の側で考えなければならないのは、まだあまり症状が顕著でない段階で手術を行う機会が今後増えていくだろう、ということだ。元気な動物を、元気なまま返さなければならない。 絶対的な安全性が求められるという点で、ますます厳しい世界が待っているのである。 ちいさくみえるいぬ 2013.11.23 Saturday
運がいい
最近、関節鏡をつかって関節外科を行っているが、ようやくうまくできるようになった。
体重が2−3kgの動物の関節内も、関節鏡を使えばくまなく見える。 膝蓋骨や滑車溝、十字靱帯、半月板を観察すると、関節内で何が起こっているかわかるのである。 膝蓋骨の慢性脱臼を起こしている動物で、しばしば前十字靱帯の部分断裂が起こっている。これはいままであまり知られていなかった事実である。関節疾患の病態生理が、今後明らかになっていくだろう。 情報を集めるところから始め、4年間毎年渡米して実習に参加し、やっと、である。 あまりにも難しすぎて、途中自分には無理だと思ったことが何回もあった。 腹腔鏡手術や関節鏡手術、PLDD(経皮的レーザー椎間板除圧術)などの低侵襲治療は、みな偶然出会ったものばかりである。「ものになるか」どうか、まったくわからないのに、よく始めたものだ。思い出してみると、始めるときは結果がどうなるか、考えもしていない。 たぶん、一般企業であれば、計画段階で全部却下されていることばかりである。 すなわち、まだ一般に行われていないことなので、「本当に成果を得られるか」という審査を受ければ、アウトだ。 自分は運がいいと思う。 遺伝的に楽観的であることを思えば、ご先祖様のおかげ、であろう。 あとからわりこんだ 2013.10.02 Wednesday
多発性椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、頸椎や腰椎に多発することがある。 おそらく遺伝的な要素であると思う。生まれつき椎間板が弱いのであろう。 昨日治療したのは、体重が2kgほどのチワワである。頸椎に3箇所、腰椎に6箇所椎間板ヘルニアがあった。 痛がって眠ることもできない。かろうじて歩行は可能だが、ほとんど頸や腰を動かさないような歩き方だ。脊椎を動かすと痛いことがわかっているので、頸や腰を棒のように動かさずに動く。 このようなケースにPLDD(経皮的レーザー椎間板除圧術)はとても有効である。 ヘルニアの外科的摘出法では、このような多発性ヘルニアには対応できない。 PLDDは椎間板の中心部の髄核という部分にレーザーを照射し、椎間板の圧力を下げる治療である。ちょうど膨らんだ風船の空気を抜くように、椎間板の圧力が下がる。すると、神経への圧迫が解除されるのだ。 ところが、椎間板内圧の減少だけではPLDDの効果を説明できないことがある。 動物によってはPLDD後に画像診断しても、ヘルニアが減少していない場合もあるのだ。 でも、動物は元気に走り回っている。 椎間板には知覚神経が豊富で、椎間板自体が痛む「椎間板性疼痛」がしばしばおこる。 背中が痛いので、動物は腰をかがめる。 背骨が屈曲するので、椎間板が押し出されるように神経に圧迫を加える。それが痛いので、また腰をかがめる・・。 この悪循環が、椎間板ヘルニアを悪化させる要因になっているのではないか。 PLDDを行うとレーザー光の作用で、椎間板性疼痛が減少することが知られている。 椎間板内圧の減少と、椎間板性疼痛の減少が組み合わさり、血液の循環が滞っている頸や腰に、再び循環が戻っていき、治癒に向かうのではないか。 とすると、痛い→動かない→腰が曲がる→神経の圧迫→痛み・・という悪循環を断ち切るには、できるだけ早期の治療が望ましい。 この話は私の仮説であるが、今まで400例以上PLDDを行ってきて、動物たちの回復の様子をずっと観察してきたので、かなり当たっていると思っている。 昨日、10箇所(予防的PLDD1箇所を含む)のPLDDを行ったチワワ。 もう普通に歩けるのは、レーザーによる椎間板性疼痛の減少によるものであろう。 椎間板内圧が下がり、治癒に向かうのには1−3ヵ月かかる。 2013.09.03 Tuesday
椎間板ヘルニアの低侵襲治療
当院ではレーザにより椎間板の内圧を減少させ、椎間板ヘルニアを治癒に導くPLDD(経皮的レーザー椎間板除圧術)を行っている。
従来は飛び出した椎間板を手術で取る、ということが一般的な治療であった。 これは特に1型ヘルニアではとても有効な方法である。 1型ヘルニアでは、椎間板の中心部にある髄核が脱出し、神経を圧迫する。「昨日まで歩いていたのに、急に歩けなくなった」場合は1型が多い。 繊細な神経が、脱出した髄核で急速に圧迫されるため、時間との勝負になる。その状態で数日様子を見ていると、神経が永久的にダメージを受けてしまう。 生涯後躯麻痺での生活を強いられ、排尿や排便の世話が必要になる。 神経は刻一刻と悪化していくので、脱出した髄核を外科手術で取り出すことが、最も有効だと考えられている。当院でも1型ヘルニアに対しては、外科的摘出を最優先して行っている。 ところが、ヘルニアにはその他の状態がある。 椎間板の髄核を取り囲む繊維輪という部分が突出する2型ヘルニアである。 これが頸椎や腰椎、馬尾などの部分に、いろいろな大きさで圧迫を加えるため、椎間板ヘルニアの病態をとても複雑にしている。 麻痺はあるが、何とか歩けている。 そのような状態で、飛び出しているヘルニアを取り出すことが有効かどうかは、十分考慮しなければならない。MRIや脊髄造影などの画像診断で、突出の度合いを確認し、外科的に摘出するかを判断する。 1ヵ所のみ、非常にヘルニアが突出している場合は、外科的に摘出するほうがよいことも多い。しかし、多くの場合、さまざまな大きさのヘルニアが混在しているため、 「どこを優先して摘出するか」 は、経験の豊富な獣医師でも判断が難しい。 慢性経過の2型ヘルニアは非常に多いが、外科的摘出を行う際、慢性的に圧迫されている神経のすぐそばにアプローチするため、どんなに努力しても何らかのダメージが神経に加わってしまう。 だから、多くの施設で、2型ヘルニアが積極的に治療されない傾向にある。 手術することにより悪化する場合があるので、獣医師も飼い主さんも「踏み込めない」のだ。 おそらく、相当数の犬や猫(猫のヘルニアはとても多いはずだが、犬のように麻痺に陥ることが少ないので、診断すらされていないように思う)は、椎間板ヘルニアにより苦しんでいるはずだが、対症療法(痛み止めなど)で治療されている。 私はPLDDが、初期のヘルニアの予防やハンセン2型ヘルニアに有効だと考えている。 PLDDの技術があれば、椎間板ヘルニアのさまざまなケースに、非常に役立つと信じているので、できるだけ多くの施設で取り入れられるよう、普及につとめたい。 こんなふうにねる(妻撮影) 2013.09.02 Monday
動物の腹腔鏡による避妊手術(腹腔鏡下卵巣子宮摘出術)
獣医師の間でも、犬や猫の避妊手術の際、腹腔鏡で行うメリットを疑問視する声がある。
通常行われる開腹手術と、大差がないのではないか。 でも、私はいままで400例以上腹腔鏡による避妊手術を行ってきて、とてもメリットがあると思っている。 動物は痛みに強いように見える。開腹手術で避妊手術をしても、その日のうちに歩くこともできるし、食事も食べる。見た目はけろっとしているので、多くの人は驚く。 人間が同じ手術を受けたら、そうはいかないだろう。 ところが、腹腔鏡による避妊手術は「もっと楽」なのだ。 本当にそうかどうかは、動物に聞かないとわからない。でも、私はそれまで数千例の避妊手術を開腹で行ってきたが、明らかに差を感じるのである。 この差を数値化しようと、研究は進んでいるが、いろいろな検査値には現れない。 そのため、客観的に「楽であったか(低侵襲だったか)」を証明することは難しい。 (人間であれば、手術を受けた人にアンケートを行い、統計処理をすると結果はでるだろう) 一番いいのは、私が手術している様子を獣医師に見てもらうことかもしれない。 そう思い、手術を公開している(獣医師、動物看護士のみ)。 見学した獣医師は異口同音に「動物の負担が少ない」と言う。 半信半疑できたひとも、見れば納得するようである。 私は現在、9割近くの避妊手術を腹腔鏡で行っている。 体につく傷が5mm前後の傷3ヵ所だということも利点だが、腹部臓器を引っぱることなく「おなかの中で」血管処理や組織の切離ができることが、痛みの少ない理由だと思う。 高齢になり、もう一度腹部の手術を受けなければならなくなったときも、過去に手術をしたことがわからないくらい、癒着が少ない。 人間の医療でも、腹腔鏡のメリットが当初疑問視された。 パイオニアの医師たちは、他の医師に「通常の手術で十分なのに、どうしてそんな面倒な手術をするのか」と言われたそうだ。その常識を覆したのは、患者さんの声だったという。 いまでは胆嚢摘出術の9割が、腹腔鏡で行われるようになっている。 今週末、東京で獣医師対象に腹腔鏡下卵巣子宮摘出術のレクチャーを行うことになっている。いかにこの方法がよいか、PRしたい。 きみょうなふたり 2013.07.03 Wednesday
低侵襲治療3(病と戦うという思想)
私に腹腔鏡外科の基礎を教えて下さった山形基夫先生は、腹腔鏡手術の本質的な意味について、過去にこんなレクチャーをされた。
人の医学では、たとえば胃がんを例にとると、ステージの進んだ進行がんに対しては、次のようなアプローチがなされてきた。 「がんの摘出・リンパ節郭清・抗がん剤治療」という手順である。 近年、外科手術のテクニックやさまざまな手術器具の発展により、非常に洗練された手技を用い手術が行われるようになった。腹腔鏡も利用された。 ところが、大規模な調査によると、このような手順を踏んだ患者さんと、治療をせずに経過を見た患者さんとでは、生存率に差がなかったのである。 つまり、がんは転移がはじまり全身的な疾患へ移行すると、外科治療でコントロールするのが困難になるのだ。よく知られた事実ではあるが、客観的なデータで、これが明らかにされた。 すなわち、がん治療の神髄は局所にある、ということ。 早期に発見して、転移がはじまる前の状態でのみ、外科治療の利点が発揮される。 「そのなかで、究極の局所治療が、腹腔鏡手術なんだ」 山形先生はレクチャーで、そう語っておられた。 がんや病気などを駆逐する。 治療のアプローチに関し、人間は「病の原因を排除する」「病巣を根こそぎ取り去る」というように、悪者退治に邁進しようとする。 椎間板ヘルニアがそこにあれば、取り去る。臓器に異常があれば移植する。 実はそういった行為は、人間が頭の中で考えたストーリーに過ぎない。 体に負担が大きな手術をして、劇的に治癒したひとのストーリーを聞くと、人間が病気を覆したという感慨がわく。 でも本来は、多くのケースでその手術が有効だったか、客観的に調査しなければならないだろう。原因を取り除いて、ほんとうに病気がよくなったか・・。 もしかしたら、医学というものは傲慢で、多くの手術しなくて済む患者に手術を施してきたかもしれない。先の胃がん手術の話のように、後年になって正しい評価がされる場合もある。 ということは、現在人間の頭で考えて「正しい」と思われている治療に、もっと謙虚な視点を持つ必要がある。 ある侵襲性の高い治療が提唱されたとき、後年それが否定されたら、傷ついてきた患者さんはどうなるのか。 だからこそ、低侵襲に治療を行うことは必須なのだ。 動物に対しては、なおさら、である。 ぽえむふう 2013.07.02 Tuesday
低侵襲治療2(外科侵襲について)
動物の体に負担をかけたくない、という獣医師と飼い主さんの心理的な面を述べた。
今日は外科侵襲そのものの意味を考えたい。 「動物に対し、大きな手術は避けたい」 そう考える人が多いと言った。ところが、「先生、手術で治りませんか?」と質問されることも、実は多いのである。 病気で弱っている動物を前にすると、人間は次の一手を探そうとする。薬を飲んでじっくり待たなければならない場合でも、しびれを切らして次へ行こうとする心理はよくわかる。 でも、この心理バイアスで、選択を誤ってはいけない。 非常に困難な状況のとき、人間は荒療治で乗り越えようとする。 たとえば癌と宣告されたとき、そのままでは死に至るが、大きな手術をすれば1%の確率で治ると言われるとする。(たとえば、すべての癌細胞の郭清手術をし、術後抗がん剤治療を行う、など) すると、かなりの人が手術を選ぶのではないか。 このまま何もせずにいるより、可能性があるほうに賭ける。これは当然の考えである。 ところが1%の確率、というのは、医学で言うと「ほぼ治癒に導くのが無理」という数字である。機械ではなく生き物が対象なので、100%無理とは言えない。それで、出てきた確率と言える。(個人的には確率50%以下の手術法は、手術でないと思っている) この場面では、生物を科学的に見ると言う視点からは手術の適応ではない。 ところが心理的側面から見ると、「確率がゼロでないなら」と、手術に挑むことになる。 誤解を恐れずに言えば、近代医学はそのように進んできた側面がある。 心理バイアスにより、患者は容易に侵襲性の高い治療に挑もうとする。医師も腕をふるいたい。その結果、外科手術は革命的な進歩を遂げた、と言えないだろうか。 だれもが侵襲の高い治療を希望しないにもかかわらず、「高侵襲の手術」が選択されるのには、このような理由があると考えられる。 動物医療でも同じだ。 もし治療が不成功に終わっても、「できる限りのことをした」という気持ちが獣医師にも飼い主さんにも生じる。 でも、その外科侵襲が本当に動物にとって必要だったかどうか、もう一度考えてみてもよい。 繰り返しになるが、動物は治療を選択できないのだ。 (朝から難しい話ですみません。しかも推敲する時間がないので散文になっています。自分なりに考えをまとめたいので、トライしているのですが、わかりにくければ読み飛ばして下さい) ・・って最後に書くな!(笑) かたづけのとちゅうで 2012.03.17 Saturday
低侵襲治療2
「傷が小さい」から体の負担が少ない、と低侵襲治療をとらえるひとが多い。
ところがもっと積極的な意味がある。 近年「外科侵襲」、つまり手術によって人間や動物がうける傷害が詳しく研究されるようになった。 小さな傷の場合、体の反応は局所のみである。 皮膚に傷ができたら、その場所の修復機構で治してしまう。 ところが一定以上の傷になると、生き物は脳を司令塔にして必死の防御をする。 外科手術による損傷が大きくなればなるほど、凝固機構や免疫反応が激しくなり、好ましくない結果を生じる可能性が高くなる。 低侵襲治療は、そのようなリスクを減らす役割がある。 また、腫瘍の治療では、外科手術の持つ意味が近年大きく変化している。 以前は、たとえば胃がんの手術のとき、周辺のリンパ節に転移していた場合は広範囲なリンパ節郭清(取ってしまうこと)が積極的に行われていた(人の場合)。 ところが大規模な調査により、すでに転移がはじまっているリンパ節を郭清した場合と、しなかった場合での延命率を調べると、両者に差異がなかったのだ。 このことにより、外科手術とは癌が局所にとどまっている時のみに有効である、という概念が確立しつつある。 その結果、癌は可能な限り早期に発見して、精密なレベルの治療をしようという機運がたかまっているのである。 その意味で、腹腔鏡手術の存在価値があらためて注目されている。 腹部の臓器を、カメラで拡大し、局所の治療の効果を上げる。それが治療成績につながるというのだ。 腹腔鏡手術は、究極の局所治療というわけだ。 もうひとつ。 病気の治療に対する「文化」が変遷している。 過去には病気は「やっつけるもの」だった。 悪者を退治するような方法で、病巣を根こそぎ攻撃する。 外科手術がひとつのショーのように、派手であればあるほど効果があるような風潮があった。しかし、そのときに生体にかかる負担は軽く扱われていた。 近年、外科侵襲の研究が進むにつれ、そのような概念が変わりつつある。 「癌と共存する」「病気と共にくらす」という言い方をよく耳にするようになったのは、偶然ではないだろう。 たとえば関節疾患では、こんなたとえがある。 「以前は関節外科は大工仕事だったが、いまは庭師の仕事である。」 ・・さらに。 私もそうであるが、動物の体に何らかの負担をかけることに、獣医師として罪の意識がある。 先日上海でご一緒した埼玉のK先生は、 「ぼくは、かわいそうな治療きらいなんです・・。」 と言われていた。外科で有名な先生である。現在、ホメオパシーなどの体に負担が少ない治療も取り入れている、とのこと。 外科手術をずっと専門に行っている医師や獣医師ほど、漢方や鍼治療などの代替医療に関心が高い傾向があるようだ。 そういう流れのもと、私は低侵襲治療に取り組んでいる。(・・長すぎた) ふとんでのびのび 2012.03.16 Friday
低侵襲治療
動物の苦痛を、飼い主さんも獣医師も気がつかないことがある。
人間は自分の症状を、細かく医師に伝えることができる。 「脇腹のあたりがさし込むように痛い」 「腰が突っ張る感じがする」 ところが動物は、そういう症状があっても言葉にしない。 PLDD(経皮的レーザー椎間板除圧術)の論文を読んでいると、おもしろいことが書いてあった。 予防的PLDDの検討という論文なので、治療前にはその動物に症状がないことが前提となる。 過去に椎間板ヘルニアの症状を起こしたが、何らかの治療で回復した動物に対し、今後再発しないように予防のためPLDDを行う。 論文にはこう書いてあった。 「PLDD後は一定期間の安静を飼い主に指示した。ところが多くの飼い主は、犬が活動的になったので安静が難しいと言った。」 「治療前より元気で活発になった、と多くの飼い主が答えた。」 これは、おかしい。 治療開始前は、「現在椎間板ヘルニアの症状がない」ことが前提である。治療ではなく予防の論文なのだ。 ということは、獣医師や飼い主さんが「治った」と思っている場合でも、実際には動物は苦痛を持っていた、と考えていいのだろう。 つまり人間の目は節穴かもしれなくて、動物の病気は、多くの場合過小評価されている可能性がある。 そういう見地から考えると、動物の治療はもっと早く行っていい。 とすると、一見(人間の目から見た場合)あまり症状がない動物に治療や手術を行わなければならない。 そのときに、動物の体に大きな負担がかかるような手術方法をとることは、多くの飼い主さんには心理的に負担になるだろう。 現在とても元気(に見える)なのに、おなかを開けて手術をする、背骨を削って椎間板を取り出す・・。そういうことには、通常同意が得られない。 その結果、病気が進むまで治療を待たねばならない。 そういう意味で、動物を低侵襲に治療する意味がある。 腹腔鏡で負担が少ない手術が受けられる、PLDDで傷もなく短い入院期間で退院できる。 そのことにより、一歩早く治療ができる。 そのための大前提は、確かに低侵襲かということだろう。 安全性を高め、洗練された方法にするための努力は欠かせない。 まえ うしろ 2011.02.04 Friday
低侵襲治療の概念
動物に対して、低い侵襲、つまり身体に負担をできるだけかけない方法で治療する、という考え方が近年注目されつつある。 |