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はりねずみ通信

兵庫県姫路市にあるかない動物病院。
椎間板ヘルニアの治療であるPLDDや腹腔鏡手術などの低侵襲治療に力を入れています。
最終章、ベニチア
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    昨夜からの雨が、熱くなりすぎた大地を冷やしているようだ。

    実は動物病院のエアコンの調子が悪く、昨日入れ替えを業者の方にしていただいた。ところが、うまく作動せず、今日修正が必要だそうだ。

    ということは、今日の午前中はエアコンが効かない。(2台のうち1台だけだけど。)雨が降って、よかった!


    旅行の話は、あまり長くなるといけないので、今回は最終章。

    船の最後の寄港地は、イタリアのベネチアだった。ベネチアには2日滞在したが、1日目はすごい猛暑。
    午前中歩き回ったら、暑さと人混みで疲れてしまって、早めに退散する。
    ベネチアは、ペストが終焉したことを神に祈る祭りのため、たいへんな賑わいである。
    夜は花火があり、船のデッキから鑑賞する。
    ベネチアの町を背景に、遠くで花火が開く。音はあとから、昼間の熱で作られた雲に反響して響いてくる。
    「遠くの花火」も、いいものだ。

    その夜、雨が降った。
    今回の旅行は、すべて快晴だったため、「最後の最後で、雨か・・」と思った。翌日は、ベネチアをあちこち散策する予定だった。
    ところが、雨は朝には止み、雲に切れ間が見え始めた。
    それから、天気はぐんぐんよくなっていき、出かける頃には快晴になる。

    雨上がりの町は、前日より過ごしやすく、あちこちを歩き回ったのだった。
    昼ご飯は、ピザ、である。
    自分のピザの腕前を上げるため(?)、本場でマルゲリータを食べようと、店に入る。広場を前にして、屋外でも食べられる店である。
    ピザは、おいしかった。わかったことは、おいしさの秘訣はモッツアレラチーズをケチらないこと、である。

    勘定をしようと思い、ウエイターを呼ぶ。
    私が知っているイタリア語は、ありがとうと「お勘定お願いします」だけなので、得意のイタリア語で、「オカンジョウ、オネガイスマス」と言った。
    ウエイターは、少し不思議な顔をして、
    「オワリ、デスネ」
    と日本語で答えた。
    「アリベデルチ」と私が言うと、
    彼は、
    「アリガトウ、ゴザイマシタ」
    と返す。
    ・・せっかく会話したかったのに。

    塩野七海さんは、ベネチアのことを、こんなふうに書いていた。
    「ベネチアは千年続いた都市です。敵を逃れ、干潟に住み着いた民から発展したこの町は、大国の間でしたたかに生き抜いてきた。そして、最後の最後まで影響力と経済力を維持したのだ。ベネチアは単なるゴンドラの町ではない」
     
    私たちはトルコ・ギリシャ・クロアチアなどを経て、最後にベネチアに到着した。朝、早起きしてベネチアの町が近づいてくるのを見たとき、これが人間が作った文化の粋なのだ、と思ったのだった。しかもそれは、長い時間をかけ、数々の苦難を乗り越えて作られたものだ。

    朝日に照らされた古都は、宝石のように美しかった。




    近づいてくるべネチア

    | 旅行 | 06:59 | comments(4) | trackbacks(0) | - | - |
    手の動き
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      職業がら、ひとの手の動きが気になる。

      旅行中、どうしても和食が食べたくなり、寿司屋に行く。
      マスターは日本人。いかにも職人風で、無口である。
      私の寿司を握ってくれた職人は、たぶんアジア系の外国人である。
      彼はにこにこしながら、
      「ナニニナサイマスカ?」
      と片言の日本語で聞いてくる。人なつっこそうな表情である。

      ところが注文を受けたあと、彼の顔つきは一変する。
      きりっと引き締めた目つきで握りはじめる。
      手の動きには、一切無駄がなく、指先まである種の緊張感がみなぎっていることがわかる。
      私は手の動きだけを見ていた。
      そこだけを切り取ってみると、日本人の職人が寿司を握っているとしか思えない。
      若い彼は、マスターのもとで厳しい修行を受けてきたのだと想像した。

      握り終わったあとは、またもとのにこにこ顔である。
      「ソバモ、タベマスカ?」
      「たべます、たべます」
      すっかり日本食に飢えていることを見通してか、メニューにないものを出してくれたのだった。おいしかった。

      もう一つ、手の話。
      サントリーニ島は、本当に美しい島で、そそり立った断崖の上に、白い壁の家が張り付いて建っている。
      小さな港から町に行くには、ロープウェーかロバである。
      ロバに乗るのは、なんとなくかわいそうな気もしたので、ロープウェーで登る。
      小さな町は、海からの風に吹かれて気持ちよかった。
      白い壁の家と海のエメラルドグリーン、空の青がコントラストをなして、とても美しい。

      観光客が歩く方向と、反対方向に行くと、ひともまばらである。
      日差しは強いが、日陰にはいると涼しいし、なにより風が心地いい。

      住居のあいだに、雑貨や絵などを売る小さな店があった。
      店先ではイーゼルにのせた小さなキャンバスに、水彩画を描いている人がいた。
      そこで描いた絵や、ガラス細工、陶器、貝殻で作ったアクセサリーなどが店に入るまでの通路に並んでいる。どれも、素朴なデザインのものだった。

      薄暗い小さな店内にはいると、初老の男性が静かに座っている。
      目が合うと軽く会釈して、また、手元の作業を続けた。なにかアクセサリーの手入れをしているようだった。

      土産になりそうなものをいくつか選んで、彼に渡した。
      彼はゆっくりした動きで、紙の袋を取りだし、ひとつひとつ袋の中に入れていく。手は大きくてゴツゴツしているし、しわの多い顔は日焼けしている。どこかの写真で見た、ギリシャの漁師のような面もちである。

      ところが、彼の手の動きがとても繊細なのだ。
      貝殻細工のネックレスをそっとつまみ、袋の中にいれる。その動作ひとつひとつが、大切な家宝を扱うような、やさしい動きなのである。

      入れ終わったあと、袋の縁を丁寧に折り曲げ、小さなホッチキスで左右をゆっくり止めて、こちらにそっと差し出す。
      私はなにか、とても大切なものを贈られたような気分だった。


      顔よりも指先に表れるものがある。



      この店で買った、陶器の風鈴




      | 旅行 | 06:45 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
      虫とけものと家族たち
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        「虫とけものと家族たち」(ジェリー・ダレル著、池澤夏樹訳、集英社文庫)はギリシャのコルフ島に移り住んだ家族の話。時代は1930年代。
        この本はもう絶版になっているようで、妻が古本屋で探してきた。

        この本の訳者の池澤夏樹さんは、私も好きな作家なのだが、「虫とけものと家族たち」を読んで、ギリシャに移住することを決め、3年をギリシャで過ごしたという。

        せっかくギリシャに行くのだから、と飛行機の中で読み始めたら、止まらなくなり、一気に最後まで読んでしまった。
        池澤さんがギリシャに住みたいと思ったのも、無理はない。

        10歳のジュリーの視点で書かれたコルフ島での生活は、刺激に満ちている。もともと動物好きだったジェリーが、自然豊かな島の生活に投げ込まれたのだから、幸福でないはずがない。
        さまざまな昆虫や動物を探しに、毎日島を探検する。見たことのない生物との出会い、島の風変わりな人たちとのエピソード、ちょっととぼけたところのあるお母さんや変人ぶりを発揮する兄や姉・・。

        この本を読むと、だれもが幸せを感じると池澤さんはあとがきに書いている。どうしてだろう?

        ギリシャの島がおもしろい、ということはもちろんだけど、「日常を面白がる」作者の視線がキメ手、であると私は思う。
        まわりに虫やヘビがいても、関心のない人には背景に過ぎない。(あるいは恐怖を感じるのみ?)
        変人のお兄さんを嘆いていては、幸せになれないだろう。

        とにかく、目に入るものはすべておもしろい!とジュリーは思っている。だから、それを読む読者が幸せになるのだろう。

        自然といつも触れている、日常を面白がる、
        それが幸福の秘訣だとこの本は教えてくれた。



        世界で一番美しい!サントリーニ島

        | 旅行 | 06:47 | comments(3) | trackbacks(0) | - | - |
        ソフィスティケート
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          ワールドカップサッカーを船の上で観た。
          アメリカ人、ドイツ人、スペイン語圏の人、中国人など、さまざまな人種の人とサッカーを観るのは、なかなか楽しかった。
          さすがにスペイン人は、すごい盛り上がり・・。

          座ってみていると、あとから前の席に座ろうとするひとがいた。
          それらの人は、必ず座るときに後ろを振り返り、
          「ここに座るけど、見える?」
          と聞いてくる。
          「大丈夫ですよ」
          というと「そうか」と言い、座るのである。

          こういうシチュエーションの時、日本ではあまり他人に声をかけない。
          欧米人は、
          後ろの人が通るとき、ちょっとドアをもっておく、
          エレベーターで「どの階で降りるの?」と聞く、
          そういったことを、ごく普通にするように思う。

          ちょっとしたことだけど、コミュニケーションを取ることで、ぎくしゃくするのを防ぐことができる。

          ただ、この話で言いたいのは、そういうマナーの話ではなく、欧米人のソフィスティケート(洗練された)文化は、さまざまな歴史の上に成り立っている、ということである。ローマは一日にして成らず、というところか。

          ギリシャ文化は欧州文化の起源であるといわれる。
          今回ギリシャを旅行するので、ギリシャ神話の本を読んだり、ギリシャがでてくる映画(たとえば「その男ゾルバ」など)を観たりした。
          するとかなり強烈な話が多い。
          たとえば、ギリシャの神々は人間以上に人間的である。
          恨みを晴らすために呪いをかけたり、日本人から見るとグロテスクな話が多い。
          「アテナ神は、ゼウスの頭から奇声を発しながら生まれた」
          (しかも鎧を着た完全武装で!)
          などというのは、理解に苦しむ・・。頭が割れて出てくるって・・。

          そういう荒々しいギリシャの神話から引き継がれた文化は、ローマの文化やキリスト教の影響を受け、イスラム文化と激しくぶつかり合いながら、ヨーロッパを形成していく。
          現在のヨーロッパの文化や習慣は、それらのせめぎ合いの中で、徐々に洗練されてきたものだろう。
          クラシック音楽や、文学、洗練されたマナーは、はじめからあったわけではなかった。

          ギリシャの美しい島々や遺跡を見ると、ヨーロッパは長い歴史を経て現在に至っていることがわかる。

          その中に身を置いてみると、自分がアジア人だということを感じる。
          船の乗組員は色々な人種がいるが、フィリピン人などアジアの人には何となく親しみを感じる。
          目が合ったときに、意味のない笑いをするとか、なんとなくシャイだったりとか・・。


          サントリーニ島


          | 旅行 | 07:55 | comments(3) | trackbacks(0) | - | - |
          エフェソスの遺跡
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            先日診察の時に、ハルさんが、「先生がなかなか帰ってこないから、先生の夢を見ましたよ」
            と言った。(夢にまで見ていただいてありがとうございます)

            実は私も旅行の中盤で夢を見た。

            動物3匹を行方不明にしてしまい、探し回る夢だった。結局どうしても見つからず、絶望しているところで目が覚める。
            「夢でよかった」
            と、心から思った。
            仕事せずに遊んでいる、という罪悪感が見させた夢だと思う。ああ!

            でも、旅行から帰ってみると自分がとても元気になっているのに気がつく。今いる場所から離れて、はじめてわかることもあって、旅行はいいものだと思う。たくさんの方に迷惑をかけたけれど。


            前回のブログの写真は、エフェソスの遺跡で見かけた猫である。
            はなさんが言われていたように、猫は本当にどこにでもいる。
            ただ、私が感慨にふけったのは、この遺跡が4000年前の遺跡だということは、当時猫はいなかった、ということ。

            現在人間が生活を共にしている猫は、北アフリカのリビアに住むリビア山猫が起源だという。すべての猫の祖先は、地中海に接するリビア山猫なのである。3000年前に、ネズミの駆除を目的に家畜化されたと言われている。

            エフェソスの遺跡はトルコなので、同じ地中海に面している。
            4000年前には、まだこの場所には猫がいなかったはずだ。
            この猫の祖先は、リビアから地中海を越えてこのあたりにやってきたのだろうか?
            この遺跡ができた頃は、人間はまだ猫に出会っていなかった。
            時間と空間のスケールを、肌で感じたのだった。

            エフェソスにはアルテミス神殿という神殿があるが、原型をとどめていない。ギザのピラミッドと並び、世界7不思議のひとつである。
            私が見たのは復元された図書館の一部(写真)で、猫もそこにいた。

            エフェソスは新約聖書のパウロが書いたといわれるエペソ人への手紙のエペソであり、聖母マリアやキリストの弟子のヨハネが晩年を過ごした場所といわれ、クレオパトラがマルクス・アントニウスと過ごしたところである。

            日が落ちるまで、その雰囲気を楽しんだのだった。




            図書館あと



            | 旅行 | 05:59 | comments(3) | trackbacks(0) | - | - |