2014.12.12 Friday
昨日の手術より
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雑種犬、膝蓋骨脱臼のため関節鏡検査、ブロックリセッションと関節包の縫縮
トイプードル、股関節脱臼のためCアーム透視下にて股関節ピンニング
猫、外傷処置
猫、去勢手術
ポメラニアン、内視鏡検査
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はりねずみ通信兵庫県姫路市にあるかない動物病院。
椎間板ヘルニアの治療であるPLDDや腹腔鏡手術などの低侵襲治療に力を入れています。 2014.12.12 Friday
昨日の手術より
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雑種犬、膝蓋骨脱臼のため関節鏡検査、ブロックリセッションと関節包の縫縮 トイプードル、股関節脱臼のためCアーム透視下にて股関節ピンニング 猫、外傷処置 猫、去勢手術 ポメラニアン、内視鏡検査 ねこようこたつはきもちいい 2014.12.08 Monday
長く勤めてほしい
当院に勤めている受付や看護師、獣医師などには、「長く勤めて欲しい」と思っている。
結婚や出産、さまざまな家庭の事情で、いったんは職場を離れることがあるかもしれないが、落ちついたら戻ってきて欲しい、といつも言っている。 ところが、以外にあっさりと退職してしまう場合が多い。 目の前にある事柄に集中したい、という気持ちもわかる。もしかしたら、仕事がきついので、ゆっくりしたいと思うのだろうか。 「また戻ってきますから、その時はよろしくお願いします」 という言葉は、聞いたことがない(例外は受付の小原)。 動物の医療に関する極めて専門的な事柄を教育されてきている、という実感が少ないのだろうか。身につけた知識や経験は、本当に貴重である。おそらく、いったん職を離れても、戻ってくれば、そのノウハウは生きるはずである。 新人の人が一から学ぶのと違って、すぐにとけ込むことができるだろうし、短時間働くとしてもいろいろとこなせるはずだ。 ・・とにかく、苦労して身につけたスキルを、簡単に手放して欲しくないのである。 私自身は、自分が取り組んでいることを途中でやめるのが嫌いである。 いや、嫌いと言うより、 「ここでやめたら、今までの苦労が無駄になる」 という、もったいなさ、かもしれない。 もったいない、というのはある種の執着でもある。それも欲望の一種であろう。 若い人は、そういう意味で欲がないのかも。 「ガツガツしないほうがかっこいい、と思っている人、多いですよ」 と、ある獣医師が言っていた。 べつにかっこ悪くたっていいんじゃない?長く勤めることで、ゆっくりと成長する、という戦略もあり、ではないか。 よくみるととおくにねこがいる 2014.12.06 Saturday
急性捻転3(予防)
急性胃捻転の続きを書きたい。(これまでの経緯は、過去ログを参照下さい)
一度発生した胃捻転を治癒に導くのは難しい。 統計上は周術期死亡率が5割ほど、と言われている。手術をしても半数の犬は助けられないのである。最大の理由は、「来院までの時間」だ。 胃が捻転すると、お腹のまわり(あばらより尻尾側)が膨らんでくる。ただ、見慣れていないと気がつかない方もおられるようだ。それから、嘔吐。吐きたいけれど吐けない状態が続く。 その状況が発生してからは、症状は一気に悪化してゆく。おそらく、数時間以内に取り返しのつかないステージまで進行してしまうだろう。 私たちの施設では、電話連絡を受けるとすべての仕事を中止し、全員で治療するルールにしている。また、麻酔前の処置や、麻酔方法、胃ガスの除去などに長年の経験がある。そのため周術期の死亡率は1割以下であるが、やはり救えないケースもある。 胃捻転を予防できないか。大型犬が多い米国を中心に、予防法の研究が進んできたが、右側の腹壁内側に胃の幽門部(出口に近いところ)を縫い付けることで、予防が可能であることがわかっている。これは10年以上前から行われていることだが、実際に手術を受ける犬は、それほど多くなかったはずだ。理由は、手術侵襲(手術による身体的負担)が大きいからである。 大型犬の胃を固定しようと思うと、腹部を正中から大きく開け、深い位置で組織の剥離や縫合の処置をしなければならない。おそらく20〜30センチ以上の傷になるだろう。 そこで、近年、腹腔鏡下で胃固定を行う方法が取り入れはじめられている。 ところがこの方法が本当に有効なのか、長期的な経過報告はまだ出ていないようだ。 腹腔鏡で通常の手術と同じような精度で胃固定を行うことには、制限がある。 そのため、結紮を必要としない特殊な糸を使って縫合したり、脇腹を4−5cm程度切開し外側から胃を固定する手技(腹腔鏡補助下)が行われている。 私は、開腹手術と同様の方法を、腹腔鏡で行えるように取り組んでいて、5mmから1cmのポート3ヵ所から器具を入れ、胃の漿膜の剥離、腹膜・筋層の分離、全周の縫合を行っている。理論上は、開腹手術と同様の予防効果が期待できるはずである。 ただ、これはちょっと難しいのである。 動物を側臥位(横に寝かせた状態)で手術をするのだが、ちょうど縫合・結紮する場所が「天井」の位置になるからである。 毎日ワンハンド・スリップノットの練習を行っているのは、これがスムーズに行えるためでもある。 でも、小さな傷3ヵ所で完全な胃固定ができるのなら、予防的手術は普及すると思う。多くの施設で取り入れられるよう、術式の定型化が目下の目標。 ただしいこたつのはいりかた 2014.12.04 Thursday
バージルの11ヶ月
シェットランド・シープドッグのバージルは、11ヵ月間、毎日動物病院へ通った。
いままで、多くの動物の治療に関わってきたが、これだけ長期間一日も欠かさず通院したのはバージルだけである。 15歳のころ、馬尾神経を椎間板ヘルニアが圧迫し、排尿困難になった。 そのときはPLDD(経皮的レーザー椎間板除圧術)を行い、排尿可能になったが、17歳になって、ついに自力排尿ができなくなったのである。 自宅で膀胱を圧迫して排尿させたり、尿カテーテルを留置して常に尿が出るようにしたり、排尿させる方法を相談したが、いずれも飼い主のFさんの事情で難しかった。 「先生さえよければ、毎日通います」 そうおっしゃって、通い始めたのが昨年の12月である。 以来、毎日朝9時(こちらの都合で、時間がずれることもあったが)、Fさんはバージルを連れてくることになった。 尿道にカテーテルを入れ、尿を抜くのはそれほど難しいことではない。いつも10分くらいで終わってしまうことだが、よい点は毎日バージルの様子を診ることができることだ。 途中、特発性前庭炎になって歩けなくなったり、痙攣発作が起きたこともあったが、その都度改善し、また元気になった。 高齢のため、調子が悪くなるたびに、Fさんが息子さんたちを呼び、「もう最後かもしれないから」と言ったが、いつも元気になるので、 「狼少年になった」 と笑っておられた。 そういった小さな物語りがちりばめられた11ヶ月だった。 先日バージルは亡くなった。 バージルが亡くなったことは、まだ受け入れられない、と言われていたが、亡くなった数日後にお会いしたときのFさんの表情は明るかった。 それを見て、わたしもほっとしたのだった。 私は、毎朝バージルに会わないのが、ぽっかり穴が開いたような感覚である。 ましてや、Fさんはバージルが不在であることを、どのような寂しさで受け止めているのだろう。 しばらくは、毎朝バージルを思い出し、Fさんが元気に過ごすことを祈ろうと思う。 載せる写真がなかったので、とりあえず今朝とった1枚。 行きずりの猫。 2014.12.03 Wednesday
生命体
生命の本質とは何か。
福岡伸一さんの著書によれば、たえず体の中の構成要素が入れ替わりつつも、一定の構造を保っていくもの、とのことである。 つまり、私たちの身体は今も半年後も同じような「かたち」をしているはずであるが、皮膚や腸・筋肉だけでなく骨や神経でさえも、構成要素は入れ替わってしまう。物質は流転してゆくのに、個体は同じかたちで維持される。それが生命というものである。 先週末は、学会等でいろいろな施設の獣医師と出会った。一緒に食事をする機会も多かったので、いろいろな話をしたが、思ったのは、 「動物病院も生き物と同じだ」 ということである。 動物病院は日々進化していく。とくに学会に参加する施設の獣医師はモチベーションが高いことが多いので、常に先を見て、新しい知識や技術をどんどん取り入れている。 施設が手狭になり作新したり、機器を増やしたり、スタッフが増減したり。いわゆる「構成要素」は入れ替わってゆく。 それでも、基本的な「姿勢」のようなものは維持しているのである。 変わりつつ保つ。それが変化が激しい世界で生きていくのに必須である。 そういう認識を新たにした。 そして、それは恣意的であってはならない。 無理やり大きな変革を起こして、大きくシフトしていくと「肉体」がついていかない。 その時々で、必要と思われることに注力して、自然に新陳代謝するのがよい・・。 ちょっと抽象的でわかりにくいかもしれないが、動物病院というこの生命体を守っていくのが、私の仕事である、と悟った。そんな週末だった。 学会の合間に、手術室のデザイン工房に見学に行く。これはクールだ! 2014.12.02 Tuesday
昨日の手術より
昨日の手術より
トイプードル、腹腔鏡下避妊手術と臍ヘルニア整復術 ヨークシャ・テリア、前十字靱帯断裂の内固定除去 柴犬、慢性股関節脱臼整復と、透視下のピンニング ミニチュア・ダックスフント、歯石除去と抜歯 チワワ、肝疾患の精査のためCT検査(門脈シャントとの診断) ヨークシャ・テリア、帝王切開、2匹無事出産 学会で不在にしていたためもあり、外来診察で長時間お待たせすることになってしまった。 外来が終わったあと、すぐ帝王切開に入ったが、もう10時前である。 私と角谷だけで行おうと思っていたが、何も指示しないのに看護師の福嶋が残って助手をしてくれた。帰り際、 「ゴメンね、おそくまで」 と言ったら、にこっと笑って、 「全然だいじょうぶです!」 と答えてくれた。あの笑顔は、最高だったなあ。 よくがんばりました 2014.11.27 Thursday
急性胃捻転3
急性胃捻転の治療について。
一度捻転が発生してしまったら、多くの場合緊急に手術が必要である。 (胃チューブや内視鏡で、胃の減圧ができれば、容体が安定してから手術になることもある) 全身状態が非常に悪い状況で手術をしなければならないため、リスクは高い。 全身麻酔をかけ、まず内視鏡が胃まで入るか確認する。食道が捻れているので、内視鏡が入らないこともあるが、もし入れば胃のガスを吸引することができ、全身の血行動態が安定するからである。 時計方向に捻れることが多いので、胃の位置を元に戻す。 これは書くと1行なのだが、膨らんだ胃は、どこが入り口でどこが出口なのか、表面からは見えないことも多い。胃を穿刺してガスを抜きながら、整復を試みる。 胃が元の位置に戻ったら、幽門部付近の胃を、腹壁に固定する。再び捻転するのを防止するためである。 胃と一緒に脾臓も捻れていて、血行遮断がおきていると、整復後貯まった血液が流れ出し、全身に悪い影響を及ぼすことがあるため、脾臓を摘出することもある。 論文等では、胃捻転の周術期死亡率は50%程度だといわれている。 適切な処置をしても、救えない犬も多いのだ。 急性胃捻転を予防するため、あらかじめ胃を腹壁に固定する手術をすることもある。 いわゆる予防的胃固定術であるが、今まではあまり普及していなかった。 胃を固定するためには、胸の深い犬では深い位置で操作を行わなければならないため、手術創がかなり大きくなってしまう。 予防のため、負担の多い手術を決断するのが躊躇されるため、予防が必要とわかっていても、手術されないことが多かったのである。 いまは、腹腔鏡で予防的胃固定ができるようになっているが、それについては次回。 しゅんかんのかお 2014.11.26 Wednesday
急性胃捻転2
急性胃捻転になりやすいのは、どんな場合か。
まず、一般的に胸の深い大型犬種で発生しやすい、といわれている。 「胸が深い」という意味は、人間でいうみぞおちの位置から背骨の位置までの距離が長い、ということである。 グレートデン、ジャーマン・シェパード、レトリバー種、ワイマラナーなどは、急性胃捻転の好発犬種と考えられている。 「胸が深い」と、胃が自由に動くスペースが多くなるため、捻転しやすいのであろう。 中高齢になると、胃の周囲を支える結合組織が緩むことが多いので、発生率は上昇する。しかし、若い犬でも起こることもある。 胃にガスが貯まりやすくなるような状況を避けることが、予防になる。 具体的には、 食事をとったあとは運動しない、 いっぺんに大量の食事をとらない、 消化の悪い食事は避ける。 ということになる。 ドライフードを主食としている場合に、発生が多いといわれるが、明確な証拠はないようである。ただ、乾燥した食事を一気に食べると、胃液と混じり消化するまでの時間がかかることは想像できるため、高齢になり消化力が落ちてくると影響があるかもしれない。 しかし、どんなに気をつけていても、なる場合はなってしまう。 明日は予防手術について。 まどぎわのふたり 2014.11.25 Tuesday
急性胃捻転について
急性胃捻転について書きたい。
正確には「急性胃捻転胃拡張症候群(GDV)」と呼ばれる。 大型犬に多いが、小型犬にも発生する。 急に胃にガスがたまり、胃が風船のように膨らむ。 その状態でおなかが張っているだけの場合は、胃拡張という診断になる。 ところがその後、胃がおなかの中でぐるりと捻転することがある。それが急性胃捻転である。 胃には食べ物が入っていく食道と、出て行く十二指腸がつながっているため、胃が捻転すると、これらも捻れてしまう。 つまり、入り口と出口がふさがってしまうのである。 すると、胃の中に閉じ込められたガスが発酵し、胃がどんどん膨らんでいく。 この速度は非常に早く、数十分から数時間で、信じられないほどおなかが膨満するのだ。 まず起こるのは胃の血行障害である。その後、周囲の肝臓や脾臓、消化管にも圧迫が加わっていく。時間が経つほど、これらの臓器の傷害は進み、多臓器不全の状態で動物は亡くなってしまう。血栓症からDIC(播種性血管内凝固)という病態に進むことも多い。 発見から治療まで、時間との勝負になる。 「おなかが急に膨らんできた」 「吐こうとするけど、吐けない」 という症状が見られれば、すぐに動物病院へ連絡しなければならない。 その際に、ここに書いた症状を正確に告げることが、とても重要である。動物病院では、連絡を受けてからすぐ治療に入れるよう、準備していかなければならないからである。 つづきは、明日。 かわいいけづくろい |